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最高裁判所第二小法廷 昭和30年(あ)3982号 判決 1958年7月18日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人関原勇の上告趣意第一点について。

弁護人のした被告人の精神鑑定の申請を却下したからといって、憲法三七条二項に違反しないことは、すでに当裁判所の判例としているところであるから(昭和二五年(あ)五六五号同年一二月二六日第三小法廷判決、集四巻一二号二六三六頁、昭和二三年(れ)八八号同年六月二三日大法廷判決、集二巻七号七三四頁各参照)、所論は採用できない。

同第二点は、違憲をいうが、その実質は事実誤認、訴訟法違反の主張に帰し、同第三点は、判例違反をいうが、原審において控訴趣意として主張、判断されていない事項に関する主張であるから不適法であり(なお、本件のような場合に、傷害の同時犯として起訴されたものを共同正犯と認定しても、そのことによって被告人に不当な不意打を加え、その防御権の行使に実質的な不利益を与えるおそれはないのであるから、訴因変更の手続を必要としないものと解するのが相当である〔昭和二七年(あ)二二三三号同二八年一一月一〇日第三小法廷判決、集七巻一一号二〇八九頁参照〕)。同第四点は、違憲をいうが実質は訴訟法違反、量刑不当の主張に帰し(なお、憲法三七条一項の公平な裁判所の裁判とは、所論のような場合を指すものでないことについて、昭和二二年(れ)四八号同二三年五月二六日大法廷判決、集二巻五号五一一頁参照)、同第五点は、違憲をいうが、結局実質は事実誤認の主張に外ならないものであって、いずれも刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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